| 開催月日 | 6月28日(土) | 開催市町 |
朝来町 |
| テーマ | 但馬のヴァイオリン工房 | ||
| 講師 | 松下寿幸 |
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| 場所 | 松下氏の工房(朝来町物部87) | ||
| 参加者 | 島垣・岩本・中田・能登・衣川・高石・西躰・栃尾・水田・友田・細見・浜野・木村 | ||
| 担当 | 浜野・木村・岩本 | ||
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■ 製作工程 ◇材料◇ ヴァイオリンはモミの「表板」とカエデの「裏板・横板・ネック」の部材からなる。柔らかいモミと硬いカエデの木の箱で音を響かせる。ドイツから輸入するが、ドイツ産は森林保護の面で厳しく、東欧産だ。裏板のカエデはケヤキでも音への影響は少ない。イタリア産の表板を息子が御土産にくれたが、使ってみると音が明るかった。イタリア製が高値の理由の1つだ。ネックは硬い黒檀などを使う。そうでないとプロの場合、2・3年で指跡の溝が彫れる。ヴァイオリン1台の木材費は数万円ほどかかる。10年以上寝かせた材でないとダメ。5年ぐらいだと必ず動く。 ◇製作◇ ヴァイオリンは胴の部分の長さが355mmであること以外は製作者によって微妙に違う。気に入ったヴァイオリンの写真を実寸大に拡大し型板をつくる事もある。左右対称に作ることが基本で型は半型、削るのも左右同時進行。板厚は真中ほど厚くして豆カンナで削る。表板を5段階の型板で3〜5.5mm、裏板は3段階の型板で2.5〜3mmに削っていく。板表面はサンドペーパーを使うがその他は全てペーパーを使わずに最後まで削って仕上げる。板圧が不均一だとウルフトーンを起す。表板・裏板の縁には装飾と割れ防止を兼ねたパーフリングを象嵌する。表板の裏には力木を付ける。これが無いと音に締りが無くドラム缶を叩いたような音になる。完成しないと音が聴けない為、製作途中では材を指で叩いた音を聴いて判断する。手作り楽器の他に工業製品モデルがあるが、表板はプレス成型による。部材の接合には「ニカワ」を使う。ヴァイオリンには修理が付物だし、調音も必要。ニカワだと剥がす事が出来るが接着剤だと修復不能になる。ニカワは3時間で乾燥し、弾くことも出来るが、完全に乾くには3・4ヶ月かかる。それまでは音が表に出ず湿っぽい。白木のヴァイオリン1台の製作には1.5ヶ月はかかる。 ◇ニス塗装◇ 塗装工程には1塗装に3・4日、30回の重ね塗りで3・4ヶ月かかる。完成したヴァイオリンもニスが完全に酸化乾燥しないと本当の音は出ない。但馬の梅雨では乾燥に1週間は置く必要がある。濃いニスは斑が出来やすいため、薄いニスを塗り重ねる。日焼けした白木に塗ると美しい色が出るが柿渋で下塗りをしても美しくなる。ヨーロッパではクルミの渋を塗る。ニスの技術は長年の蓄積が大切で、この点でもイタリアは優れている。ブレンドの技術は奥深い。因みにヤマハなどの工業製品モデルのニスはウレタン吹付けによるもので、塗装工程に3日かかると採算が合わないと云われる。 ◇弦を張る◇ 本来は豚の腸の繊維。銀線、ナイロンなど今では50種以上の弦がある。どれが良いというのではなく、楽器に合ったものを使う。1つの楽器で1本ずつ違う弦を張ることもある。どれを使うかは研究対象になっている。 ◇調音◇ 出来上がったヴァイオリンは調音をする。耳を肥やし、良い音を自分で出せないといけない。耳を肥やすために毎日自分で弾き音を聴く。10日も間が空くと音が分からなくなる為、毎日弾き続けることが大切。 |
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■ 1台から5台の名器?〜名器の真偽 ストラディヴァリウスをはじめ名器と云われる楽器がある。同じ性能のヴァイオリンであれば、イタリアンが300万円ならばクレモナ製は1000万円する。この工房で作った楽器は約80万円、店頭価格で180〜200万円になる。ブランドの影響力は大きい。甥の作った楽器が製作者のラベルを貼りかえられてイタリアンになって修理に入ってきたこともある。ラベルを貼りかえるのは簡単。さらには1台のストラディヴァリウスから5台のストラディヴァリウス(?)を作れると云われる。製作者の真贋の証明書を取るため80万円程かかるが、別途お金を出しても名器となれば安いのかもしれない。 名器ばかりを載せた本の中でさえ偽物と確信しているものがある。一製作者の楽器を年代順に並べていくと不意に異型の楽器が出てくる。良い音を求めるために試行錯誤するとはいえ、モデルチェンジには大変なエネルギーが必要だ。1台限りのモデルチェンジは不自然だ。市場全体の6〜7%強は偽物。音を聴いて選ぶしかない。偽物であれ良い音を選ぶのが本筋だ。 ■ 創作意欲 何かテーマを決めて製作にあたる。そうしないと緊張感が保てない。始めると夢中になり夜に工房に行くこともある。完成後の第一音は緊張する。世界には名器が多くある。1835年のクレッセンダー(イタリア)を手元に置き目標としている。音の面では古いものには勝てない。自分の作るものも時を経て良い音が出るようにと思いながら仕事をしている。製作の他に修理もする。修理の名人ジャックラーゼに学んだ日本人が東京に居る。阪神淡路大震災で壊れた楽器(2000万円弱の名器)の修理を依頼したが、分からない程良くなって帰ってきた。まだまだ勉強が必要だ。仕事を始めたときには製作者は数える程だったが、今は違う。製作よりも修理・調整が主となっている。 ■ 例会後記 ヴァイオリン製作には不向きな湿気の多い但馬の地で何故仕事をされるのか。誰もが抱いた疑問だった。父親の他界で帰郷するというよくある話。しかし、独学で始められたことには驚かされた。その上、今では親戚中ヴァイオリン一家ともなれば才能を感じる。現在アンサンブルを組むメンバーを募集中、レンタル楽器もあるらしい。ハード面で音楽ホールが出来、聴く機会が増え、演奏者も増えてきた。しかし、楽器を買ったものの、田舎ゆえ教えてくれる人が見つからず楽器を眠らせていた人もあったとか。文化が定着するには、教える人・修理をする人も身近に必要だと改めて感じた。今後は慰労訪問の演奏会を開きたいと話される松下さんのお顔は本当に楽しそうでした。 |
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