1996年12月例会

開催月日 12月7日(土)

開催市町

浜坂町
テーマ 染め工房と民宿の味
講 師 寺口敬子(染織家) 宇野政実(山陰海岸国立公園の自然公園指指導員)
場 所 「橡(つるばみ)の会」浜坂町居組  民宿「澄風荘」浜坂町
担 当 太田 山本

■ 「橡(つるばみ)の会」主宰寺口敬子さん宅にて
寺口敬子さんは染織家芹沢_介氏に師事される。藍や近くの野山で採集した草木を染料にして染められている。鳥取市を中心に個展など仕事の展開をされている。

 

■ ババァの共食い?ー但馬人の冬の味覚はカニじゃあない!ー

11月のカニ漁の解禁とともに、「冬の但馬の海の味覚といえばマツバガニ!」とばかりに、カニを食べに京阪神から但馬に観光客が訪れる。「地元の人は、毎日カニが食べられていいわねえ」などと、時には観光客から羨ましがられたりもする。しかし、残念ながら、地元の人はカニなどそう度々食べている訳ではない。地元の人は、カニ以外の安くてもっと美味しい、冬の日本海の味覚を知っている。
そんな訳で「カニ以外のもっと旨い日本海の味覚が食べたい。ついでにその食材についてレクチャーしていただければもっと良い」とばかりに、御馳走と知識でお腹と頭の両方を満足させたいという、贅沢なスタディが催された。

1996年12月7日、場所は美方郡浜坂町の民宿「澄風荘」。その日、夕食のメニューは鍋。いわゆる「魚スキ」と呼ばれる料理であるが、ガスコンロにかけられた鍋を取り囲んで、テーブルのところ狭しと置かれた食材がちょっと違う。ほとんど切り身状態の魚が、何種類かまとめて並べられており、それだけでは何かよくわからない。しかし中には、あまり見たことのない魚の姿もある。
 「これがババァで、ドギで、チュウコウで、カナガシラで、アンコウです」
宿の内儀さんから名前を聞くが、初めて耳にする名前もあり、参加者全員首をかしげて「?」マークを連発。そこで、本日の講師の登場と相成る。

■ 宇野政実さんプロフィールとレクチャー
今回の講師、宇野政実さんは山陰海岸国立公園の自然公園指指導員をしておられ、本職は漁師である。浜坂町釜屋にある定置網の組合に所属しておられ、魚類はもちろんのこと、海洋生物についてはとても詳しく科学的な知識も豊富である。
ちなみ に、彼の実家は近所の魚屋で、今回の鍋の食材はそのこより仕入れたものだそうである。
さて、さっそく御馳走をいただきながら、お魚のレクチャーが始まった。

■ 深海魚
ババァは正式な和名をタナカゲンゲという。カニ漁のの底引き網に一緒に入ってくる深海性の魚で、姿はウツボに似ている。傷みが早く、流通に適さないため、ほとんど地元で消費されてきた。最近、浜坂町の隣の町、鳥取県岩見町で名物にしようとPRしている。鍋に最適で、白身で柔らかく、口に入れるとホロリと崩れる。食感がタラに似ていることから、浜坂ではババァダラとも呼ばれ、吊目で口吻が尖っていることからキツネダラとも呼ばれる。メスの腹子の煮付けも珍味。
寒天質の表皮に包まれたドギは、トーロとも呼ばれる。和名はノロゲンゲ。ババァと一緒にカニの底引きに入ってくる。寒天質の表皮は独特の食感があり、通はたまらない。身は白身で、卵白のメレンゲ状態で淡く美味。お吸い物にしても独特の風味があり、最高である。鮮度がすぐに悪くなるので、あまり流通に向かない。しかし、干物にすると独特の風味が増し、日本酒に合う。

チュウコウとは、ウマズラカワハギのことである。最近の魚屋では、ざらざらした皮を剥ぎ、内臓を出して頭を落とした状態で売られている。口が小さく、口吻がやや長いため、まさにちゅー公である。大きいものでは、体長が30cm近くになる。身は引き締まり、薄造りにするとフグに匹敵する。煮付けに良し。鍋物にしても引き締まった白身が美味。キモも捨てずに調理すると、アンキモに負けないくらい旨い。

赤い魚体のカナガシラは、お頭付きで並べられていた。その頭、角があり独特の形をしている。腹側に、ヒレが変化して指のような形になっている。ホウボウの仲間と聞いて納得。鍋にすると、他の魚のように個性はないが、けっこう旨い。煮付けにするとよい。
アンコウについては、今さら言うまでもないので省略。

■ とにかく旨い!
とにかく食べている魚の解説を聞きながら、舌鼓をうつ。これほどの贅沢がありましょうか。いづれの魚も、昔はほとんど地元でしか消費されず、捕れても捨てていたとか。最近はカニ以外の冬の味覚として見直されてきており、値段も高くなりつつあるが、それでもまだ安い。
お腹は御馳走で満たし、宇野さんの日本海の魚にまつわる様々なエピソードをたっぷり聞いて、本当に素晴らしい一時でした。