1997年11月例会

開催月日 12月6日(土)

開催市町

和田山町
テーマ 湿りと土壁
講 師 渡辺一正(建設省建築研究所第4研究部部長)
場 所 和田山町文化会館
参加者 池口 岩本 太田 柴垣 島垣 住吉 中尾 中田 西村礼 藤原次 丸山 会員外2名
担 当 丸山・中尾

木材と土壁の吸放湿特性について
 (「湿りと土壁」に関する部分だけの抜粋)

■ 湿気とは水分そのものである。そこで水分について。
     水分は特殊な物質である。
■ 水分の特殊性 
○水の相変化(相転移)  気体液体 液体気体熱が放出されたり吸収されたりする。
○表面張力   液体になると水と水が非常に繋がり易い性質をもつ。
          毛細管現象の元となる。
○液体の水は、他の物質を熔解させる性質が強い。気体としての水蒸気の分子は小さく一つ一 つ独立してい るが、液体になると分子が繋がりあっている。繋がりあわないと液体にならない。
○建築の外部の水分→大気中に(雨 雪 雹 霰) 地盤に含まれる
  建築の内部の水分→人体 炊事 入浴 洗面 洗濯 暖房機 建築材料

■ 生物にとって大変重要な水が、建築においては、水分障害(雨漏り、腐れ)をひき起こす 
○材料のひび割れ  乾燥したところが縮もうとしても、含水率の高いところは縮めない。
              縮もうとする力と縮めない力とでひび割れが起こる。
○多くの化学反応(イオン反応)  水分が存在するが故に進行する。
○鉄筋コンクリートの塩害  塩素イオンの移動によって起こるが、同時に水があることで腐食す
                  る。
○それ以上に材料の吸放湿特性が建築にとって良い場合、悪い場合がある。

■ 材料の吸放湿特性(平衡含水率曲線 )
材料がその周囲の環境から水分を吸ったり、あるいは放出する特性である。要するに相対湿度がちょっと変るとキュッと湿気を吸ってくれ、逆に相対湿度が下がれば水を吐き出すという構造が重要なわけで ある。

○平衡含水率曲線
  相対湿度が変ると材料が含み得る水分の量が変るということである。
○吸放湿特性の役目
  急激な温度変化、水分障害の活性を和らげる働きをもつ。

■ 吸放湿特性があると非常にいいことは、室内側の湿度が大きく変るときに部材の内部の相対湿度が常に一定になる、平均的な価になっていくということで ある。重要なことは、材料の表面近くでそういうことが起きる、表面近くの相対湿度が安定するということである。表面結露やカビの問題もこれでかなりの程度緩和される。

材料の吸放湿特性の高いもの〜低いもの
  高い 木材 土 
  ↓  軟質繊維板 木毛セメント板 半硬質繊維板 硬質繊維板
  低い コンクリート系 グラスウール ロックウール

■ 材料の中には小さな孔がたくさんある。この孔の寸法が小さいと水分子相互がぶつかりあって凝縮して、液体になる。大気中では凝縮しない湿り空気も細孔内では凝縮する。これが吸放湿特性の基本である。

材料の中を水分が移動するメカニズム
◯気体状態での移動    水蒸気の濃度差に応じて移動する。その移動に対する
                 抵抗は経路(小さな孔)の寸法が小さければ通りにくい。
                 含水率が小さくなると、水分の移動抵抗が増え水率が上がると水分
                 は移動しやすくなる。     
◯液体状態での水分の移動  毛細管現象です。表面張力(材料と水の親水性)によって、生ま
                    れるので、親水性の少ない材料(水を嫌う)では移動しにくい。
◯水は高温域から低温域に移動する 高温域では分子の活動が非常に活発ですが、低温域で
                        は分子の活動が不活発になり、その下がる方向に向け
                                                    て水分は移動する。
                                     例えばトーストの片側を焼くと片側が濡れるという現象。
■ 材の結露について
断熱材がなにも施されていない壁の場合、結露は室内側(高温側)の表面に起こる。断熱材を入れると、水蒸気に対する抵抗との関係で結露が起きる。外装材(低温側)の放湿抵抗が高い場合は材料の表面まで達する。

1. 外装側に通気層を設けると、これだけで内部結露はおおむね消えてしまう。
  通気層をきっちり取れば、冬型の結露はほとんどなくなっている。
2. 通気層がない場合は、室内側(高温側)に防湿層を設けなさいと言われる。水蒸気を下げるこ
  とによって、結露域を消す技術です。
  この場合、高温側と低温側が入れ代わった場合、防音層によって、湿気抵抗に水蒸気の圧
   力差が出て、冷房された室内の防湿層の裏側で結露が生まれる。
3. 内外装材に吸放湿材を上手に配置すると、夏場の結露と冬場の結露の問題を同時に防止
   することができる可能性があります。

吸放湿特性というのは、抵抗とは違う概念で、時間遅れを作るということである。計算機などに使われているバッファと同じ機能が吸放湿材料特性 にあります。抵抗と同じようにあたかも通らないように見せかけているのです。

室内側の断熱材の外側に吸放湿特性が大きくて抵抗(放湿抵抗)が小さな材料を、室内側の断熱材の内側には、先ほどより放湿抵抗が大きな、しかも冷房時に内部結露を示さない程度に小さい材料を置く必要があります。

■ 質議応答
Q. 但馬の住宅をご覧になって特徴があると言われましたが、どんなところに特徴があったのでしょうか。(養蚕農家)
A. 1.土壁で塗りつめた建物は、大変きれいな仕上がりをしています。粗壁、もしくは中壁程度
     の仕上げで、あれだけの質感を出すというのは大変な技術であると思います。その背景
      にどのような技術があるのか、隠されているのかを知りたいと思いました。
   2.面白いと思ったのは一階が真壁で二階が大壁の建物です。一階が真壁で内部の居住
     者の居住性が充分得られているにもかかわらず、二階が大壁しかできなかったのは蚕
      が貴重だったでしょう。その辺のことが知りたいです。
   3.二階だけ高気密化しているのです。高気密化と言っても、湿気は通る(土壁ですら水分
     は通ってしまう)のです。そういう環境の中で、風だけは入らないようにして高気密化を達
     成しているというのは健康の上では大変重要な技術なんです。
   4.それがきちんとなされて、しかも外から見て綺麗だというのが良いことです。色合いも綺
          麗ですし、窓回りのデザインも良いです。窓と窓との間にひびが入らないように工夫され
          ています。

Q. 但馬学の今年のテーマは「湿気と但馬」ですが、我々の素人考えで湿っぽいことをテーマにいろいろやっています。こういう湿気の多い地方と木材、土壁の住宅はどういう関係にあるのでしょうか。
A. 例えば、道路をアスファルトにすると非常に環境が悪くなると同じように、室内をエンビのクロ
  スで覆うと大変環境が悪くなります。エンビのクロスで覆うというのは、最近開発されたサニタ
  リーユニットのフロアーとそう変らない環境になるのです。サニタリーユニットで住宅を作る人
  はほとんどいないと思うのです。それほど居住性が悪いんです。何故かというと吸放湿ない
     からです。吸放湿がないということは急激な変化が生まれます。急激な環境変化が生まると
     人間がなかなかついていけないのです。
  人間が住みやすい環境は、急激な変化を緩和する機能を持っている材料が必要なんです。
  湿気には開放系でないといけない。土壁は、気密にしても湿気的には開放的なものです。

Q. 土壁は吸放湿特性があり多くの湿度も含むわけですね。中身が木材ですね。その木材が湿気を含むので、素人考えでは木材が腐るのではないですか。
A. 木材をエンビのシートでくるむと、木材が腐るのは確かです。モルタルでくるんでも確かに腐り
  ますが、土や漆喰でくるむと腐りません。これは放湿抵抗が低いからです。水分の移動が容
    易な材料だからです。木材の水分移動係数よりも低い材料だと問題はないのです。木材の水
    分移動係数はかなりゆっくりなんですが、ポリやエンビのフィルムは非常に高いので、その結
    果として内部の含水率が高くなり、腐るのです。土の移動係数は低いのでトラブルは起こりま
    せん。

Q. 腐れのメカニズムというものを詳しく話してください。
A. 腐敗菌の繁殖条件は、栄養分と酸素と水分がないといけないのですが、環境の中で水分が
    多すぎると空気がなくなり、腐敗菌が死んでしまいます。大体、相対湿度で95%位が腐敗菌の
    繁殖する最適な湿度と言われています。腐敗を起こさないようにするためには、相対湿度
    95%前後にしないようにすることが大切です。完全に水中に入れるか、乾燥をすれば、木材
   は腐りません。